「3Dプリンターを買ったけれど、フィラメントって何を選べばいいの?」
「PLAやPETG、ABSって書いてあるけど、何が違うの?」
3Dプリンターを始めると、必ず出てくるのが「フィラメント」という言葉です。
実は、フィラメント選びは3Dプリントの仕上がりや使いやすさを左右する重要なポイントです。
同じ3Dプリンターを使っていても、素材によって作品の強度や見た目、失敗のしやすさが変わります。
とはいえ、最初から難しい専門知識を覚える必要はありません。
この記事では、初心者の方に向けて、フィラメントの基本から種類ごとの違い、失敗しない選び方、おすすめ商品、長持ちさせる保管方法まで詳しく解説します。
読み終えるころには、自分が作りたいものに合ったフィラメントを選べるようになるはずです!
1. 3Dプリンターのフィラメントとは?
フィラメントとは、3Dプリンターで立体物を作るために使用する、糸状のプラスチック素材のことです。
一般的にはロール状に巻かれて販売されており、3Dプリンターにセットして使用します。
熱でフィラメントを溶かし、ノズルから少しずつ押し出して積み重ねることで、立体的な作品が完成します。
この方式を「FDM方式」や「FFF方式」と呼びます。
例えば、フィラメントを使えば次のようなものを作れます。
スマートフォンスタンド、ケーブルホルダー、収納ケース、フィギュア、オリジナルのキーホルダーなどです。
身の回りのちょっとした不便を解決する便利グッズから、趣味の作品まで幅広く制作できます。
ただし、3Dプリンターには液体のレジンを使う光造形方式もあります。フィラメントは主にFDM・FFF方式のプリンターで使う材料なので、購入前に自分のプリンターの方式を確認しましょう
2. フィラメントの代表的な3種類を比較!
フィラメントにはさまざまな素材がありますが、初心者がまず覚えておきたいのは「PLA」「PETG」「ABS」の3種類です。
| 比較項目 | PLA | PETG | ABS |
| 印刷のしやすさ | ◎ | ○ | △ |
| 耐熱性 | 低い | 比較的高い | 高い |
| 衝撃への強さ | やや弱い | 強い | 強い |
| 反りにくさ | ◎ | ○ | △ |
| 主な用途 | 飾り・試作品 | 生活用品・部品 | 機械部品 |
| 初心者へのおすすめ度 | ◎ | ○ | △ |
※一般的な素材の傾向です。実際の性能は製品や印刷条件によって変わります。
PLA:初心者が最初に選びたい定番素材
PLAは、トウモロコシやサトウキビなどを原料にしたポリ乳酸系のプラスチックです。
最大の特徴は、比較的低い温度で印刷でき、冷却時に反りにくいこと。
そのため、フィギュアや小物入れ、インテリア雑貨などを作るのに向いています。
一方で、PLAは熱に弱いという欠点があります。
一般的なPLAは60℃前後の高温環境で変形する可能性があるため、真夏の車内などに置くものには不向きです。
まずは作品をきれいに完成させたい人には、PLAが最も無難な選択肢です。
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PETG:丈夫な日用品を作りたい人向け
PETGは、PLAより粘り強く、衝撃や熱にも比較的強い素材です。
例えば、工具ホルダー、収納用のフック、電子機器のケースなど、実際に使う部品を作りたいときに役立ちます。
PLAより割れにくいものの、印刷中に細い糸のような樹脂が残る「糸引き」が発生しやすい点には注意が必要です。
また、造形プレートに強く密着するため、使用するプレートによっては接着剤などの離型対策が必要になります。
PLAに慣れてきたら、次に挑戦したい素材といえるでしょう。
ABS:強度と耐熱性を求める中・上級者向け
ABSは、家電製品などにも使われるプラスチック素材です。
強度や耐熱性に優れ、機械的な負荷がかかる部品などに向いています。
ただし、冷えると収縮しやすく、造形物の端が持ち上がる「反り」が発生しやすいのが難点。
安定した印刷には、造形空間を囲うエンクロージャーなどの設備が推奨されます。
さらに、印刷中に発生する化学物質や微粒子への対策として、適切な換気・排気も重要です。
初心者が最初から無理に選ぶ必要はありません。
3. 初心者が失敗しないフィラメントの選び方
素材の違いがわかったところで、実際に購入するときに確認したいポイントを紹介します。
① フィラメントの直径を確認する
最初に確認すべきなのがフィラメントの直径です。
代表的な規格には「1.75mm」と「2.85mm」があります。
現在販売されている家庭用3Dプリンターには1.75mm対応機が多くありますが、すべての機種が同じではありません。
間違ったサイズを購入すると使用できないため、必ずプリンターの取扱説明書で対応径を確認しましょう。
② 作りたいものに合った素材を選ぶ
フィラメントは、価格だけでなく用途で選ぶことが大切です。
フィギュアや飾り物ならPLA、多少の衝撃が加わる生活用品ならPETG、より高い耐熱性が必要な部品ならABSなどが候補になります。
ただし、素材が丈夫だからといって、完成品が必ず丈夫になるわけではありません。
3Dプリント品は、積み重ねた層の境目から割れることもあります。部品の向きや壁の厚さ、内部の充填率も強度を左右します。
特に人の安全に関わる部品は、家庭用3Dプリンターで作ったものを十分な検証なしに使用しないようにしましょう。
③ 対応する印刷温度を確認する
素材によって、きれいに印刷できる温度が違います。
一般的なノズル温度の目安は次のとおりです。
| 素材 | ノズル温度の目安 |
| PLA | 約190〜230℃ |
| PETG | 約220〜250℃ |
| ABS | 約230〜260℃ |
ただし、これはあくまで目安です。特殊な配合や高速印刷向けの商品では条件が異なります。
実際には、購入するフィラメントのメーカー推奨温度を優先してください。
また、ヒートベッドの温度やプリンターの最高対応温度も確認しましょう。
④ 最初は標準的な色を選ぶ
初心者には、ホワイト・グレー・ブラックなどの標準的な色がおすすめです。
特にグレーは、表面の凹凸や積層の状態を確認しやすく、設定調整用の作品にも向いています。
慣れてきたら、透明風・マット・シルク調・蓄光タイプなどの特殊なフィラメントに挑戦してみるのも楽しいでしょう。
ただし、特殊素材は標準PLAと印刷条件が異なったり、摩耗に強いノズルが必要になったりする場合があります。
⑤ 容量と価格のバランスを見る
フィラメントは1kg単位で販売されていることが多いですが、少量サイズもあります。
初めて購入するなら、試してみたい色や素材は少量サイズ、継続して使う標準色は1kgサイズという選び方もおすすめです。
また、比較するときは販売価格だけでなく、100gあたりの価格も確認してみましょう。
例えば、1kgで2,000円のフィラメントなら、50gを使う作品の材料費は約100円です。
もちろん実際には、サポート材や失敗した分の消費、電気代などもかかります。
それでも、使う材料の量を意識するだけで制作コストを把握しやすくなります。
⑥ メーカーとスプールの互換性もチェック
商品を選ぶ際は、メーカーの推奨設定が公開されているかどうかも重要です。
専用の印刷設定が用意されていれば、初心者でも比較的スムーズに使い始められます。
また、商品にはロールを巻く土台が付いた「スプール付き」と、詰め替え用の「スプールなし」があります。
初めて購入する場合は、手持ちのスプールや自動供給装置との互換性を確認し、迷ったらスプール付きを選ぶと安心です。
4. 初心者におすすめのフィラメント3選
ここでは、初めてのフィラメント選びで候補にしたい商品を3つ紹介します。
① Bambu Lab PLA ベーシック|設定の手間を減らしたい人に
Bambu LabのPLA ベーシックは、扱いやすさを重視した定番フィラメントです。
Bambu Labの対応機種では、RFIDを利用した素材情報の読み取りに対応しており、設定の手間を減らせる点が魅力です。
カラーバリエーションも豊富なので、さまざまな作品づくりに利用できます。
特にBambu Lab製の3Dプリンターを使用している人は、最初の候補にするとよいでしょう。
② SUNLU PLA|コストを意識してたくさん練習したい人に
SUNLUの標準PLAは、初心者向けの扱いやすさを特徴としたフィラメントです。
通常のPLAなので、フィギュアや日用品の試作品など、幅広い作品に利用できます。
3Dプリンターを始めたばかりのころは、設定変更や印刷ミスによって想像以上に材料を消費することがあります。
そのため、購入時の価格を比較しながら、練習用の定番素材として検討するのがおすすめです。
③ eSUN PLA+|標準PLAより粘り強さを求める人に
eSUNのPLA+は、標準PLAより靱性や衝撃への強さを意識した素材です。
小物や模型だけでなく、比較的丈夫に作りたい作品にも向いています。
ただし、「PLA+」は全メーカー共通の性能規格ではありません。配合や強度、推奨温度は商品ごとに異なります。
耐熱性が必要な用途では、PLA+という名前だけで判断せず、製品の仕様を必ず確認しましょう。
5. フィラメントでよくある失敗と対処法
3Dプリントでは、思ったとおりの形にならないこともあります。
しかし、よくある失敗には原因があり、基本的なポイントを確認するだけで改善する場合があります。
糸引きが発生する
作品のすき間に蜘蛛の巣のような細い糸が残る現象です。
ノズル温度が高すぎる場合や、フィラメントが湿気を吸っている場合などに発生します。
まずは推奨温度を確認し、必要に応じてリトラクション(樹脂の垂れを減らすためにフィラメントを引き戻す設定)を調整してみましょう。
作品の端が反ってしまう
造形物の端がプレートから浮き上がる現象です。
プレートの汚れ、ベッド温度の不足、急激な冷却などが原因として考えられます。
プレートを適切な方法で清掃し、素材に合う温度を設定しましょう。
また、接地面を広げる「ブリム」という補助構造を追加するのも有効です。
フィラメントが出てこない
ノズル詰まりや材料の送り出し不良が考えられます。
まずはフィラメントの絡まり、設定温度、材料の残量を確認してください。
無理に押し込むと故障につながることもあるため、改善しない場合はプリンターの説明書に従って対処しましょう。
6. フィラメントを長持ちさせる保管方法
意外と見落とされやすいのが、フィラメントの保管方法です。
多くのフィラメントは、空気中の水分を吸収する性質があります。
湿気を吸った素材を使用すると、糸引きや表面の荒れ、気泡などの原因になることがあります。
そこで、おすすめなのが密閉できる容器と乾燥剤を使った保管方法です。
専用のドライボックスを購入しなくても、密閉性の高い収納ケースや保存袋と乾燥剤を組み合わせることで、湿気対策ができます。
ただし、乾燥剤入りの容器は湿気を吸うのを防ぐためのものです。すでに吸湿したフィラメントを十分に乾燥させるには、適切な温度管理ができる専用乾燥機などが必要です。
乾燥温度を誤るとフィラメントやスプールが変形するため、必ずメーカーの指定条件を守りましょう。
また、直射日光や高温になる場所を避けることも大切です。
7. 初心者が知っておきたいQ&A
Q. フィラメントは違うメーカーのものでも使える?
基本的には、プリンターに対応する素材・直径・印刷温度などの条件を満たしていれば、他社製フィラメントを使用できる機種も多くあります。
ただし、スプールの形状や自動供給装置との互換性には注意が必要です。
Q. PLAは環境に優しいから普通に捨てても大丈夫?
PLAは植物由来の原料から作られますが、自然環境ですぐに分解されるわけではありません。
家庭のコンポストなどでも簡単には分解されないため、廃棄するときは自治体の分別ルールに従いましょう。
Q. PLAなら換気せずに印刷しても大丈夫?
いいえ。PLAを含むフィラメント式3Dプリンターでも、印刷中に微粒子や化学物質が発生する可能性があります。
素材にかかわらず適切な換気を行い、特に長時間の印刷では、生活空間から離れた場所に設置するなどの工夫をしましょう。
Q. 最初から高価なフィラメントを買うべき?
必ずしも高価な商品を購入する必要はありません。
最初は対応機種や推奨設定が明確な標準PLAで、きれいに印刷する感覚を身につけることが大切です。
その後、必要に応じて強度や質感にこだわった素材へステップアップしましょう。
8. まとめ|最初の1本はPLAから始めよう!
フィラメントにはさまざまな種類がありますが、初心者がすべてを覚える必要はありません。
まずは「作りたいものに必要な性能」と「自分のプリンターで使えるかどうか」を確認しましょう。
フィギュアや雑貨を作りたいならPLA、丈夫な実用品を作りたいならPETG、さらに耐熱性を重視するならABSなどが候補になります。
そして何より大切なのは、最初から完璧を目指さないことです。
3Dプリンターは、失敗しながら少しずつコツをつかんでいく楽しさもある道具です。
まずは扱いやすいPLAを選び、小さな作品を1つ完成させるところから始めてみましょう。
自分で考えたものが目の前で形になる感動こそ、3Dプリンターの大きな魅力です。
ぜひ、自分に合ったフィラメントを見つけて、ものづくりを楽しんでください!


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